富士通の「AIエージェント・オーケストレーター」が示す、日本企業の勝機

AIエージェントを「束ねて指揮する」時代が、いよいよ到来しました。「AIを作れる会社」はGoogleやOpenAIだけではありません。しかし、「AIを束ねて社会を動かせる会社」は、日本にあるかもしれません。
実際に、2026年1月に富士通が発表した「エージェント間連携プラットフォーム」は、その可能性を示しています。これは単なるチャットボットではありません。つまり、経理AI、法務AI、物流AIなど、異なる専門性を持つ複数のAIエージェントを「オーケストレーション(指揮)」する仕組みです。その結果、複雑なビジネスプロセスを完遂する企業の新しいOSとなります。
なぜ「単体AI」ではなくAIエージェント連携が必要なのか?

GPT-5のような超高性能な単体モデルでも、企業のワークフローは解決しません。なぜなら、企業の業務には「権限の壁」があるからです。
- 経理AIは、請求書の確認はできるが、振込の実行はできない。
- 法務AIは、契約書のリスク検出はできるが、最終承認はできない。
- 人事AIは、勤怠の異常検出はできるが、給与の修正はできない。
- 物流AIは、在庫不足の予測と発注修正できるが、支払い実行はできない。
そのため、1つの巨大モデルに全てをやらせるのはセキュリティリスクが高すぎます。必要なのは、専門化されたAIエージェント同士が安全なプロトコル(MCPなど)で会話して連携することです。
AIエージェントのパラダイムシフト:階層型自律エージェント
では、富士通はどのようなアプローチを取っているのでしょうか。それは、AIエージェントを「階層化」するという方法です。
AIエージェントの階層型アーキテクチャ

この構造の肝は、「人間はリーダーエージェントとだけ話せばいい」という点です。裏側でどのAIが動いているかは、人間が意識する必要はありません。さらに、各エージェントは自分の権限範囲内でのみ動作します。そのため、セキュリティも担保されます。
具体的なソリューション:日本的組織との親和性
興味深いことに、この「すり合わせ」型のAI連携は、欧米型のトップダウンAIよりも日本企業に向いています。なぜなら、ボトムアップで部門連携を重視する日本の組織構造と相性が良いからです。(関連記事:AI活用の最新トレンド)
- 稟議システム: 複数の部署(エージェント)の承認リレーをAIが代行。
- 現場の知恵: 各現場特化の小型モデル(SLM)を束ねて、全社最適解を出す。
まとめ:これからの企業AI戦略
GAFAMが「最強の個体(LLM)」を追求する一方で、富士通は「最強の組織(Multi-Agent System)」を構築しています。2026年の企業ITは、クラウド導入競争からAIエージェント・オーケストレーターの導入競争へとシフトするでしょう。
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