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4万円台で腕を2本そろえる — SO-101の部品構成と、造形側で効いてくる判断

ゲンキ

「100ドルで作れるロボットアーム」という紹介をよく見る。部品表を開くと、そうは書かれていない

設計を公開しているリポジトリの部品表には、動く側の腕1本で米ドル121.94、日本円で24,414円とある。そして実際に学習用のデータを取るには腕が2本要るので、そちらの合計は米ドル229.88、日本円で44,530円である(いずれも2026年9月2日確認)。100ドルという数字は入口の宣伝としては間違っていないが、買い物リストの合計ではない

金額の話から入るのは、ここを外すと計画そのものが狂うからだ。1本ぶんの予算で始めて、データを取る段になって「もう1本要る」と気づく。この順序で失敗するのが最も痛い。

本記事は、SO-101 の部品構成を日本の読者の目線で読み直し、そのうえで造形側の判断に踏み込む。構造部品を自分で印刷する以上、材料も積層方向もこちらが決めることになる。公式が指定している範囲と、指定していない範囲を分けて示す。当サイトは実機を組んでいないため、以下は公式リポジトリと公式手順書に書かれていることの整理であり、組み立ての体験談ではない。

動かす腕と、教える腕の2本が要る

動かす腕と、教える腕の2本が要る

なぜ2本なのか。教え方の仕組みに理由がある。

人がロボットに動作を教えるとき、この構成では人が手で動かす側の腕(リーダー)と、それに追従して実際に作業する腕(フォロワー)を使う。人がリーダーを掴んで動かすと、フォロワーが同じ関節角度で追いかける。その軌跡を記録したものが学習データになる。

つまり2本目は贅沢品ではなく、データ収集装置である。カメラだけで人の手を撮って学ばせる方法も研究されているが、公式の手順が前提にしているのはこの2本構成だ。

そして2本は同じものではない。フォロワーは物を持ち上げる力が要る。リーダーは逆で、人が軽い力で動かせなければ実演が疲れる。この要求の違いが、次に述べるサーボの構成に直結する。

SO-101 の設計が巧いのは、この2本をほとんど同じ部品でまかなっているところだ。公式の説明でも、リーダーとフォロワーは既製部品の面ではほぼ同じで、違うのはモーターだと述べられている。構造部品はどちらも同じ手順で印刷でき、掴む部分と持ち手の形だけが変わる。2本作ると聞くと手間が倍に思えるが、覚えることは1本ぶんしか増えない

なお、先に1本だけ作って後から2本目を足すこともできる。ただしサーボのギア比が関節ごとに違うため、追加購入のときに型番を間違えやすい。まとめて買っておくほうが確実だ。

部品表を日本円の列で読む

部品表を日本円の列で読む

この部品表の良いところは、米ドル・ユーロ・人民元に加えて日本円の列が最初から用意されていることだ。為替を自分で当てる必要がない。

構成米ドル日本円
2本セット(フォロワー+リーダー)229.8844,530
フォロワー1本のみ121.9424,414

内訳の主なものは、サーボが1個あたり米ドル13.89で計12個、モーター制御基板が1枚10.60で2枚、電源が1個10.00で2個、そのほかUSBケーブル、机に固定するクランプ、ドライバーである。電源については日本での調達先として秋月電子が指定されており、1個あたり1,550円と記載されている。

ここで注意がひとつ。地域によって内訳の単価が違う。たとえば電源は米国で10.00ドルだが、ユーロ圏では15.7ユーロと相対的に高い。米国の内訳を自分で円換算して合計しても、日本円の列とは一致しない。合計を出したいなら日本円の列をそのまま使うのが正しい。

もうひとつ、この合計に含まれていないものを数えておきたい。フィラメント代、カメラ、そして海外から取り寄せる場合の送料と関税である。日本円の列は国内で買える経路を前提に組まれているが、すべての部品が国内で揃うとは限らない。44,530円は下限であって、上限ではないと読んでおくのが安全だ。

価格そのものも動く。部品表の数字は誰かが特定の時点で調べたもので、為替でも供給状況でも変わる。本記事の数字は2026年9月2日に確認した値であり、買う前に自分で開き直すべき種類の情報である。

サーボは3種類のギア比が混ざっている

サーボは3種類のギア比が混ざっている

部品表で最初に戸惑うのがここだ。同じ型番のサーボが、ギア比違いで3種類並んでいる。

ギア比2本ぶんの必要数
1/3457
1/1912
1/1473

内訳を追うと辻褄が合う。フォロワーは6個すべてが 1/345 である。リーダーは関節ごとに違い、公式の対応表では基部が 1/191、肩の上下が 1/345、肘が 1/191、手首の曲げ・手首の回転・グリッパーが 1/147 とされている。1/345 は 6+1 で7個、1/191 が2個、1/147 が3個。部品表の数と一致する。

なぜリーダーだけ混ぜるのか。公式の説明は明快で、リーダーは自重を支えられる必要がある一方、大きな力をかけずに動かせる必要があるからだ。減速比が高いほど力は出るが、手で動かすときの抵抗も増える。関節ごとに要求が違うので、ギア比を関節ごとに変えている。

この設計の含意は実務的だ。組み立て時にサーボを取り違えると、動くには動くが手応えがおかしくなる。開封したら関節ごとに仕分けておくのが安全である。

電源は5Vで、12V版に替えるなら電源も替える

電源は5Vで、12V版に替えるなら電源も替える

部品表の電源は5Vである。7.4Vのサーボに5Vの電源、という組み合わせに一瞬とまどうが、これで正しい。

公式は7.4V版と12V版の違いをこう説明している。7.4V版のストールトルクは6Vで16.5kg・cmであり、5Vの電源ではおそらくもう少し低くなると、公式自身が但し書きを付けている。より強い力が欲しければ12V版があり、そちらは30kg・cm。ただし12V版にするなら電源も12Vで5A以上のものに替える必要があると明記されている。

そしてリーダーについては「SO101 では常に7.4V」とされている。力の要る側だけを強化する選択はあっても、教える側を強くする理由はないということだ。

電源まわりは、印刷物のロボットで最初に事故が起きやすい場所でもある。筐体まわりの電源の扱いは筐体の中は思ったより熱い — 放熱と通気、そして電源まわりの安全設計(2026-08-07 公開)で扱った考え方が、そのまま当てはまる。

カメラは部品表に入っていない

カメラは部品表に入っていない

部品表を眺めていて気づく欠落がある。カメラがない

SO-101 の部品表は腕そのものを組み上げるための一覧であり、視覚は含まれていない。ところが動作を生成するモデルはカメラ画像を入力に取るので、カメラがなければ学習も推論も始まらない。ここは自分で足す必要がある。

公式の手順書に出てくる設定例を見ると、カメラの置き方には二つの型がある。ひとつは作業台を正面から撮る固定カメラ1台の構成、もうひとつは手首に付けたカメラと上から見下ろすカメラの2台構成である。解像度と毎秒のコマ数の例としては、640×480で毎秒30コマという値と、1920×1080で毎秒30コマという値が手順書に出てくる。

台数と画角の「最適解」は公式に書かれていない。書かれているのは例であって推奨ではない。ただし一点だけ、判断に使える原則が手順書にある。カメラの画像だけを見て自分が同じ作業をできるかどうか、という基準だ。人間が画像だけで判断できない配置なら、モデルにも判断できない。

安価なUSBカメラで始められるので費用は大きくないが、予算計画には最初から入れておく必要がある。前述の販売元はキットとは別売りでカメラを12ドルで出している。

机への固定は、部品表に入っている

机への固定は、部品表に入っている

カメラが入っていない一方で、机に固定するクランプは部品表に入っている。4個セットで米ドル9.00である。付属品のように見えるが、これは精度に直結する部品だ。

理由は腕の動き方にある。アームが素早く動けば、その反作用が土台にかかる。土台が滑れば、同じ指令を出しても腕の先端が届く位置が変わる。この構成でさらに悪いのは、記録したデータそのものが信用できなくなる点だ。人が実演した位置と、再生したときに腕が向かう位置が、机の上での土台のずれぶんだけ食い違う。

学習の段になってから「同じ動きが再現しない」と悩むより、最初に固定しておくほうがはるかに安い。SO-101 のような軽量な構成では、土台の固定が精度の下限を決めていると考えたほうがよい。

印刷の指定は、公式にここまで書かれている

印刷の指定は、公式にここまで書かれている

造形側に入る。公式リポジトリには印刷の指定がある。

項目公式の指定
材料PLA+
ノズルと積層0.4mmノズルで積層0.2mm、または0.6mmノズルで積層0.4mm
インフィル15%
サポート全面に設定しつつ、水平から45度を超える傾斜は除外する

インフィル15%という数字は、構造部品としては控えめに見える。ただしこの腕は自重とせいぜい数百グラムの対象物を扱う機械で、外力よりサーボの取り付け部にかかる局所的な力のほうが問題になる。全体を詰めるより、後述する積層方向のほうが効く。

材料が PLA+ で指定されている点も押さえておきたい。PLA系は寸法が出やすく反りにくい一方、高温下でのクリープに弱い。夏の締め切った部屋に組み上げた腕を置きっぱなしにする使い方は、想定されていないと考えたほうがよい。素材ごとの性質は3Dプリント 強度 設計実践 2026 — 形状・壁数・アニーリングで「割れない部品」を作る(2026-07-24 公開)で整理している。

サポートを入れてはいけない場所が決まっている

サポートを入れてはいけない場所が決まっている

公式の指定でいちばん実務的なのが、この一文である。水平軸のネジ穴にはサポートを入れないと明記されている。

理由は組み立ててみると分かる。横向きに開いた穴にサポートが入ると、除去しきれない残りが穴の内側に残る。そこへネジを通すと、わずかな残渣が芯をずらす。関節部で芯がずれれば、可動範囲の端で干渉する。組んだ後に原因を突き止めるのが難しい種類の不具合で、しかも分解しないと直せない。

サポートの除去そのものについても、公式は小さなドライバーを下に差し込んで剥がすのが容易だと案内している。地味だが、部品点数が多いので効いてくる助言だ。

はめあいの考え方そのものは3Dプリント 公差 設計入門 2026 — 「きつい・ゆるい」を数値で解決するはめあいの技術(2026-07-21 公開)で扱った。サーボホーンのように金属部品と印刷部品が噛む場所は、公差の考え方が最も効く箇所である。

ベッドサイズで造形データが分かれている

ベッドサイズで造形データが分かれている

公開されている造形データは、ベッドサイズ別に用意されている。220mm×220mm(Ender系の寸法)と、205mm×250mm(Prusa や UP 系の寸法)の2通りで、それぞれ腕1本ぶんが1ファイルにまとめられている。

この配慮はありがたい反面、自分の機械がどちらにも当てはまらない場合は自分で並べ直すことになる。並べ直すなら、次節の積層方向を意識して置き直したい。まとめて刷るときの段取りは大量印刷を前提に設定を決める — 時間・材料・失敗率の見積り(2026-09-02 公開)の考え方が使える。

公式が指定していないこと — 積層方向は自分で決める

公式が指定していないこと — 積層方向は自分で決める

ここからは公式に指定がない領域である。以下は当サイトの設計上の推論であり、公式の推奨ではないことを先に断っておく。

配布データは特定の向きで配置されているが、その向きが強度上の最適である根拠は書かれていない。一方で、印刷部品が壊れるときの典型は積層面での剥離である。したがって、次の観点で見直す価値がある。

  • 関節の軸まわり: 曲げの力が積層面を引き剥がす向きになっていないか
  • サーボの取り付け座: ネジの締め付け力が積層面を割る向きに入っていないか
  • 細い梁: 長手方向に層が走っているか、輪切りになっているか

ただし向きを変えればサポートの付き方が変わり、寸法精度も変わる。強度を取ると精度を失うという交換が起きるので、闇雲に回すのは勧めない。まず配布データの向きで組み、壊れた場所だけを刷り直すときに向きを変えるほうが、判断材料が増える。

この機械に特有の事情もある。腕は動き続ける機械なので、力のかかり方が一定ではない。静的な荷重なら最悪の一方向だけを考えればよいが、関節が回れば同じ部品に別方向の力が順番にかかる。加減速のたびに向きが変わる荷重に対しては、「この向きが最適」という単純な答えが出にくい。

もうひとつ効くのが、繰り返しによる緩みである。ネジで締めた印刷部品は、振動と熱で少しずつ座面がへたる。金属どうしの締結より緩みやすいので、組み上げた直後より、数十時間動かした後のほうが精度が落ちると見ておいたほうがよい。インサートナットを使うか、締結部の座面を広く取るかは、この点への対処になる。ここは公式が触れていない領域なので、各自の判断になる。

印刷物が壊れることは、この構成では失敗ではない。壊れた部品を刷り直せることが、そもそも印刷して作る利点である。

ネジはM2とM3、そして組み立ての勘所

ネジはM2とM3、そして組み立ての勘所

公式の組み立て手順で使われるネジは、M2×6mmとM3×6mmの2種類である。小さいほうのM2はサーボの固定に、M3は構造部品どうしの締結とモーターホーンの固定に使われる。

組み立て手順で見落としやすいのが、サーボのIDを1個ずつ設定する工程である。工場出荷時はどのサーボもIDが1になっているため、そのまま数珠つなぎにすると通信が成立しない。公式手順では、基板に1個だけつないだ状態でIDと通信速度を書き込み、それを6回繰り返す。設定は不揮発の領域に書かれるので、この作業は一度で済む。

つまずきどころも公式に列挙されている。電源、パソコンと基板をつなぐケーブル、基板とサーボをつなぐ3ピンのケーブルの3点を確認すること。Waveshare の基板を使う場合はジャンパを B 側に設定すること。基板を触っているうちに電源のケーブルが抜けることがある、という現実的な注意まで書かれている。

キットを買う場合に何が入っていないか

キットを買う場合に何が入っていないか

自分で部品を集めるかわりに、キットを買う道もある。ただし中身をよく見る必要がある

たとえばある販売元のキットは249.90ドルだが、これはサーボと変換基板とケーブルのセットで、3Dプリント部品とカメラは含まれないと明記されている。造形部品は29.90ドル、カメラは12ドルで別売りである。組立済みの製品や未組立のセットなど、複数の形態が並んでいるため、名前が似ていても中身が違う。

3Dプリンターを持っている読者にとっては、造形部品が含まれないことはむしろ好都合だ。印刷できるものを買う必要はない。逆に持っていない読者は、造形部品込みの構成か、印刷代行を前提に考えることになる。

印刷時間と材料の量は、公式には書かれていない

印刷時間と材料の量は、公式には書かれていない

正直に書いておく。公式リポジトリに造形時間とフィラメント使用量の記載を見つけられなかった(2026年9月2日時点)。組み立て所要時間についても、紹介記事の類には数字が出回っているが、公式の記載としては確認できていない

したがって本記事では、これらの数字を出さない。知りたい場合は、配布データを自分のスライサーに読み込ませれば、自分の機械での見積りがその場で出る。他人の環境で測られた分数より、その値のほうが役に立つ

見積りの手順自体は難しくない。ベッドサイズに合った造形データを読み込み、公式指定の設定(PLA+、積層0.2mm、インフィル15%、45度超を除くサポート)を当ててスライスすれば、時間と使用量がその場で表示される。腕2本ぶんを刷るなら、それを2回ぶん見る。この10分の作業で、以降の計画がぶれなくなる

材料代を金額に直したい場合は、フィラメント1kgの購入価格と使用グラム数から出せる。電気代まで含めた原価の考え方は3Dプリントの原価を日本の電気代で計算し直す — 値付けの根拠を作る(2026-08-19 公開)で組み立てた計算がそのまま使える。SO-101 の部品は小物の集合なので、原価計算の練習台としても手頃だ。

なお設計そのもののライセンスは Apache 2.0 である(リポジトリの LICENSE 本体で確認)。著作権表示を保てば商用利用も改変も許される。印刷した部品を含む何かを作って売る可能性まで視野に入れる場合、この点は確認しておく価値がある。

まとめ — 買う前に決めておくこと

まとめ — 買う前に決めておくこと

部品表から読み取れる判断は、次の四つに集約できる。

  1. 1本か2本か。学習データを取るなら2本。日本円で44,530円が出発点
  2. 7.4V版か12V版か。12Vにするなら電源も替える。リーダーは常に7.4V
  3. サーボを関節ごとに仕分けておく。ギア比が3種類混ざっている
  4. 水平軸のネジ穴にサポートを入れない。組んだ後では直せない

これに加えて、部品表に入っていないカメラと、部品表に入っているクランプ。SO-101 は腕だけでは完結しないという前提で予算を組みたい。

金額を先に確定させておけば、あとは印刷して組むだけになる。ここまでは機械の話で、モデルはまだ一行も動いていない。動作を生成するモデルの側の全体像はロボット基盤モデルが生成AIに手を持たせた — 言葉で動く機械はどこまで来たのか(2026-09-07 公開)にまとめてある。

腕が組み上がったら、次は教える番だ。人が手で動かした軌跡をどう記録するかが、そのまま結果を決めることになる。

出典・参考

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