自宅でメタルパーツを錬成せよ:Cold Metal Fusionという革命

Cold Metal Fusionは、家庭用3DプリンターでMetal Fusionパーツを製造できる革新技術です。「金属3Dプリンターは高い」と思っていませんか? 1千万円クラスのSLM(レーザー焼結)機が常識だったのは、2025年までの話です。
しかし2026年、私たちは 3万円のEnder-3 で、本物のステンレス鋼(316L)やチタンパーツを製造できるようになりました。その魔法の名前が「Cold Metal Fusion (CMF)」です。フィラメントの中に金属粉末を練り込み、印刷後に「焼く」ことで純金属性部品を得る技術です。(関連記事:3Dプリンター活用ガイド)
この記事では、あなたのガレージを「製鉄所」に変えるためのロードマップを示します。
なぜMetal Fusionなのか?:プラスチックの限界

たしかに、PLAやPETGは素晴らしい素材です。しかし、エンジニアリングの現場では「耐熱性」「強度」「導電性」が足りない場面が多々あります。たとえば、ロボットのアームやエンジンのマニホールド、カスタムナイフなどです。これらを自宅で作ることは、全メイカーの夢でした。
これまでの「メタルフィル(金属色PLA)」は、あくまで見た目だけでした。しかしCold Metal Fusionは違います。焼き上がったパーツは、JIS規格の金属と同等の物性を持ちます。
Metal Fusionのプロセス:グリーンパーツと脱脂焼結

Metal Fusionのプロセスは、陶芸(セラミックス)に似ています。具体的には、以下の3ステップで進みます。
ステップ解説(印刷→脱脂→焼結)
- Print (Green Part): 金属粉末を80%以上含んだ特殊フィラメントで造形します。この段階では脆い「グリーンパーツ」です。
- Debinding (Brown Part): 化学溶剤でバインダー(結合剤)を溶かし出します。
- Sintering (Metal Part): 炉に入れ、融点直下の高温で焼き固めます。ここでパーツは約20%収縮し、密度99%以上の金属になります。
つまり、この「20%の収縮」を予測し、スライサーで拡大補正(Scale Factor)をかけるノウハウがMetal Fusionの肝です。
具体的なソリューション:BASF Ultrafuseと家庭用炉

1. フィラメント:BASF Ultrafuse 316L
現在、最も入手性が良く信頼できるのがBASF社の製品です。標準的なFDMプリンターで印刷可能です(ノズル温度240℃程度)。ただし、真鍮ノズルは数時間で削れるため、硬化鋼ノズルが必須です。
2. 焼結サービス vs 自宅炉
- 委託サービス: 最初は、印刷したグリーンパーツを専門業者に郵送して焼いてもらうのが無難です。
- 自宅炉: 本気勢の間では、小型の電気管状炉(約20〜30万円)を導入する動きがあります。さらに、制御用AI(Raspberry Pi + 熱電対)で温度プロファイルを管理すれば、自宅での完全一貫生産も可能です。
推奨エコシステム
- Slicer: Orca Slicer / PrusaSlicer (金属収縮補正機能あり)
- Printer: Bambu Lab P1S / A1 (ダイレクトエクストルーダー推奨)
- Nozzle: Hardened Steel 0.4mm or 0.6mm
まとめ:Metal Fusionが変えるモノづくりの未来
Cold Metal Fusionは、3Dプリンティングの「最終段階」です。プラスチックのおもちゃを作る時代は終わりました。これからは、あなたのアイデアを100年残る「金属」として具現化する時代です。
まずは硬化鋼ノズルを購入し、316Lフィラメントを1リール注文してみてください。その重み(1kgで通常のフィラメントの1/3の長さしかありません)を感じた瞬間、あなたのモノづくり観は変わるはずです。


