葉の写真で植物の状態を AI に診断させる — 当たる症状と外れる症状を 33 枚で数えた

葉に白い斑点が出た、下の葉から黄色くなってきた。スマートフォンで写真を撮って AI に見せれば、植物の診断をその場で返してくれる。ただ、その答えがどこまで当たるのかは、答えの文面からは分からない。論文には「精度 99%」という数字が並ぶ一方で、手元の対話 AI がその水準で答えている保証はどこにもない。植物の診断に AI を使うなら、まず何が当たり、何が外れるのかを知っておく必要がある。
本記事では、症状のラベルが付いた公開データセットのトマトの葉 33 枚を、Claude と OpenAI の2社の AI に読ませ、答えを「特定できた/候補を挙げた/誤った/根拠なく断定した」に分けて数えた結果を示す。先に結論を書くと、ハモグリバエの食痕は2社とも全問で当て、確信度「高」の答えはこの4件だけで4件とも正しかった。一方で、栄養欠乏と、圃場で撮ったハダニの被害は2社ともほぼ当たらなかった。確信を持って間違える答えは1件も無かったが、「健康です」と答えて欠乏を見落とす外れ方があった。この結果から、質問の書き方と答えの確かめ方をまとめる。
※本記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれます。
- 研究の「99%」は何を測った数字か
- 一般の対話 AI は研究の条件とどこが違うのか
- 当サイトの実測の条件 — 公開データセットの葉 33 枚を2社に読ませた
- 結果 — Claude は 14 枚、OpenAI は 10 枚を特定した
- 当たった症状 — ハモグリバエの食痕は2社とも全問正解
- 外れた症状 — 栄養欠乏と、圃場で撮ったハダニ
- 外れ方の形 — 断定ではなく「低」「中」のまま別の原因を挙げた
- 植物の診断を AI に頼むときの聞き方
- 答えを確かめる手順 — 葉の裏、株全体、そして地域の公的機関
- 薬剤を決めるのは AI ではなく、ラベルと法令
- 道具の選び方 — 対話 AI、植物用のアプリと API
- この実測で言えないこと
- まとめ — 植物の診断 AI は候補を出させ、確かめる順番を決めるために使う
- 参照
研究の「99%」は何を測った数字か

植物の病害を画像で見分ける研究として最もよく引かれるのが、Mohanty らが 2016 年に Frontiers in Plant Science に発表した論文だ。PlantVillage という 54,306 枚・38 クラス(14 作物・26 病害と健全)のデータセットで畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を学習させ、取り分けておいたテスト用の写真で 99.35% の正解率を出した。
この数字には条件がつく。PlantVillage の写真は、研究圃場から葉を摘み取り、灰色か黒の紙の上に置いて屋外で撮ったものだ。背景の大半は切り落とされ、葉先の向きもそろえてある。論文自身がこれを「controlled conditions(管理された条件)」と書いている。学習とテストが同じ撮り方の写真なら、99% を超えたということになる。
同じ論文には、もう一つの数字がある。最良のモデルを、ウェブから集めた別の写真で試した結果だ。正解率は 31.40%(121 枚)と 31.69%(119 枚)だった。38 クラスをでたらめに選んだ場合の 2.63% よりははるかに高いが、99% からは3割台まで落ちている。論文によれば、二つの集合で最も成績がよかった設定は異なり、121 枚では背景を除いた葉の画像で学習したモデル、119 枚ではカラー画像で学習したモデルだった(どちらも GoogLeNet の転移学習)。学習に使った写真と撮り方も集め方も違う写真では成績が大きく下がる、というのがこの論文のもう一つの結果であり、本記事の出発点でもある。ただし、撮影条件だけを変えてその影響を取り出した実験ではない。
読者がスマートフォンで撮る写真は、紙の上に置いた1枚の葉ではない。背景に土や鉢が写り、光は窓からの斜光で、葉は株についたまま傾いている。研究の数字をそのまま手元の診断に当てはめることはできない。
一般の対話 AI は研究の条件とどこが違うのか

研究で高い成績を出しているのは、ほぼ例外なく、その用途のために学習または微調整したモデルだ。
2025 年に Scientific Reports に載った LLMI-CDP は、VisualGLM-6B を LoRA で微調整し、自作の 2,498 枚・141 分類のデータで評価したモデルである。比較した相手はオープンソースの画像対応モデルで、評価は中国語の対話で行われた。ChatGPT・Gemini・Claude と比べた研究ではない。著者自身が、回答の評価を GPT-4 だけに頼っても防除策の正確さは保証されないと限界を書いている。
2026 年 9 月に Frontiers in Plant Science に載った研究は、汎用の画像対応モデル Qwen3-VL-8B をそのまま使うと、トマトで 53.87%、ほかの作物を含めて 47〜67% だったと報告している。これに複数のエージェントによる探索と自己学習による微調整を組み合わせると、トマトで 94.67%、ほかも 9 割台に上がった。ただし著者は限界として、実験がすべて実験室条件の PlantVillage の写真で行われたことを明記している。
2026 年 7 月の同誌の論考は、植物保護に大規模言語モデルを使う際の課題として、単一の汎用モデルが多様な作業にわたって十分に信頼できないことを挙げ、微調整や知識グラフ、複数エージェントの組み合わせを対策として論じている。
整理すると、次のようになる。
| 条件 | 報告された正解率 | 出典 |
|---|---|---|
| この分類のために学習した CNN、同じ撮り方の写真 | 99.35% | Mohanty ら 2016 |
| 同じ論文の CNN(外部の写真の集合ごとに最良の設定)、ウェブから集めた別の写真 | 31.40%/31.69% | Mohanty ら 2016 |
| 汎用の画像対応モデル(Qwen3-VL-8B)のまま、実験室の写真 | 47〜67% | Front. Plant Sci. 2026 |
| 同モデルに病害分類用の仕組みと微調整を加える、実験室の写真 | 94.7〜99.7% | Front. Plant Sci. 2026 |
読者が普段使う対話 AI は、この表の3行目に近い立場にある。植物の診断のために微調整されたものではなく、写真も実験室条件ではない。では実際にはどう答えるのか。これを確かめたのが、次に示す当サイトの実測である。
対話 AI が画像と文章をどう扱っているのか、専用に学習したモデルと汎用のモデルがどう違うのかを基礎から押さえるなら、図解中心の入門書が読みやすい。
当サイトの実測の条件 — 公開データセットの葉 33 枚を2社に読ませた

写真は、ライセンスが明確な公開データセットから選んだ。観葉植物に特化した公開データセットで配布元がライセンスを明記したものは見つからなかったため、野菜の葉で行った。写真は記事に転載せず、配布元へのリンクだけを張る。各節の画像は内容を表したイラストで、実測に使った写真ではない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 写真 A | PlantVillage(CC BY-SA 3.0)のトマト5クラス×3枚=15枚。256×256、紙の上で撮影 |
| 写真 B | OLID I(CC BY 4.0)のトマト6クラス×3枚=18枚。バングラデシュの圃場で撮影。3024×3024 を 1024×1024 に縮小し、EXIF を除去 |
| 抽出 | 乱数で各クラスから3枚。ファイル名は P01〜P15・O01〜O18 に付け替え、正解は別ファイルに保存 |
| Claude | Claude Code CLI の claude -p、モデル claude-sonnet-5。ツール・MCP・プロジェクト設定なし。システムプロンプトに「あなたは親切なアシスタントです。」の1文を指定 |
| OpenAI | Codex CLI の codex exec、モデル gpt-6-astra(推論 medium)。ウェブ検索の無効化(web_search="disabled")と MCP サーバーの設定を空にする指定(mcp_servers={})を付けて実行。システムプロンプトは CLI の既定のまま。33 件すべての標準エラーに、手元の PC に設定済みの MCP サーバーへの接続を試みて失敗した記録が残っていた |
| Gemini | 実施できず。Gemini CLI が個人の無料枠で認証を拒否した |
ファイル名を付け替えたのは、データセットのフォルダ名やファイル名に病名が入っているためだ。ChatGPT のヘルプ(画像入力の FAQ)は、画像のファイル名やメタデータを処理しないと書いている。ただし、今回使った Codex CLI について同様の記載は確認できておらず、Claude にも同様の記載が見当たらなかったので、両社とも中立な名前にそろえた。OpenAI のウェブ検索を切ったのは、有効のままだと検索結果を根拠に答え、2社の条件がそろわないからである。ただし、2社の条件は完全にはそろっていない。システムプロンプトの指定は Claude だけで、OpenAI 側では MCP を空にする指定を付けても接続の試行が記録された。その試行がツールの利用につながったかどうかは、残した記録からは確かめられない。
質問文は次のとおり。作物がトマトであることは伝え、症状のラベルは伝えていない。
トマトの葉の写真です。この葉の状態を診断してください。
健康か、問題があるなら何が原因と考えられるかを、
写真から分かる根拠と一緒に教えてください。
最後に次の3行を書いてください。
最も可能性が高いもの:
他の候補:
確信度(高・中・低):
採点は機械的に決めた。最有力の答えに正解があれば「特定できた」、他の候補にだけあれば「候補を挙げた」、どこにも無く確信度が「中」か「低」なら「誤った」、どこにも無く確信度が「高」なら「根拠なく断定した」とした。窒素とカリウムの両方が欠乏しているクラスで片方だけを挙げた場合は「一部一致」として分けた。語の照合は正規表現で行い、全 66 件を目視でも確認した。目視の確認で、次の3件を直した。最有力の答えが「大きな異常なし」で、ハダニは可能性として添えただけだった Claude の1件は「候補を挙げた」に分類し直した。OpenAI の1件は、他の候補の「チャノホコリダニ」を正規表現が「ダニ」として拾っていたが、チャノホコリダニはハダニとは別の科(ホコリダニ科)のダニなので「誤った」に直した。Claude の1件は確信度の行の書式が崩れて自動では読み取れなかったが、回答の末尾に「確信度(低)」とあったので「低」として数えた。回答の全文と採点結果は当サイトの実行記録に残してある。
結果 — Claude は 14 枚、OpenAI は 10 枚を特定した

| AI | 写真 | 特定できた | 候補を挙げた | 一部一致 | 誤った | 根拠なく断定した |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Claude | PlantVillage 15枚 | 8 | 2 | 0 | 5 | 0 |
| Claude | OLID I 18枚 | 6 | 1 | 3 | 8 | 0 |
| OpenAI | PlantVillage 15枚 | 4 | 3 | 0 | 8 | 0 |
| OpenAI | OLID I 18枚 | 6 | 2 | 2 | 8 | 0 |
クラスごとに見ると、当たる症状と外れる症状がはっきり分かれた。
| 写真の出所 | 正解ラベル | Claude(特定/候補/一部/誤り) | OpenAI(特定/候補/一部/誤り) |
|---|---|---|---|
| PlantVillage | ハダニ(ナミハダニ) | 1/1/0/1 | 1/0/0/2 |
| PlantVillage | 健全 | 3/0/0/0 | 1/1/0/1 |
| PlantVillage | 疫病 | 1/0/0/2 | 1/0/0/2 |
| PlantVillage | 葉かび病 | 0/1/0/2 | 0/0/0/3 |
| PlantVillage | 輪紋病(早疫病) | 3/0/0/0 | 1/2/0/0 |
| OLID I | カリウム欠乏 | 0/0/0/3 | 0/0/0/3 |
| OLID I | ハダニ | 0/0/0/3 | 0/0/0/3 |
| OLID I | ハモグリバエ | 3/0/0/0 | 3/0/0/0 |
| OLID I | 健全 | 3/0/0/0 | 2/1/0/0 |
| OLID I | 窒素・カリウム欠乏 | 0/0/3/0 | 0/0/2/1 |
| OLID I | 窒素欠乏 | 0/1/0/2 | 1/1/0/1 |
33 枚中の「特定できた」は Claude 14 枚、OpenAI 10 枚だった。ただし各クラス3枚しかなく、1回だけの実行である。この差を「Claude のほうが植物の診断に強い」と一般化することはできない。言えるのは、この 33 枚ではこうだった、というところまでだ。1枚あたりの所要時間は Claude が平均 26.3 秒、OpenAI が平均 20.5 秒で、Claude の API 相当額は 33 枚で合計 1.12 ドルだった。
当たった症状 — ハモグリバエの食痕は2社とも全問正解

2社とも3枚すべてで当てたのが、ハモグリバエ(エカキムシ)の食害だった。回答の説明によれば、幼虫が葉の内部をトンネル状に食べ進んだ跡が、白い線として表面に浮き出る。形がはっきりした症状で、今回はほかの病害と取り違えた回答が無かった。
Claude の回答の一つは、根拠を次のように書いている。
葉の表面に白く曲がりくねった線状の筋が複数見られます。
そのうえで最有力にハモグリバエを挙げ、確信度を「高」とした。今回の 66 件の回答のうち、確信度「高」は4件しかなく、4件ともハモグリバエの写真で、4件とも正しかった。
健全な葉も比較的よく当たった。Claude は健全の6枚をすべて健全と答え、OpenAI は6枚のうち3枚を最有力で健全とし、2枚では候補に挙げた。紙の上で撮った輪紋病も、Claude は3枚とも最有力に早期疫病を挙げた。3件とも、黒褐色の斑点を根拠に挙げていた。
当たった症状に共通するのは、写真1枚の中に特徴がはっきり写っていることだ。線状の食痕、褐色の斑点、傷の無い緑の葉。形と色だけで判断がつく症状は、一般の対話 AI でも当たりやすかった。
AI が挙げた候補を症状の写真と見比べて確かめるには、野菜の病気と害虫を症状から引ける図鑑が手元にあると早い。
外れた症状 — 栄養欠乏と、圃場で撮ったハダニ

反対に、2社ともほとんど当たらなかった症状が二つある。
一つは栄養欠乏だ。カリウム欠乏は2社とも3枚中0枚だった。窒素欠乏・カリウム欠乏・その両方の計9枚のうち、Claude は6枚で最有力を「健康」とした。たとえば窒素欠乏の写真に対する Claude の最有力は、
健康な葉(病害虫の兆候なし。摘葉・整枝で外された正常な葉と推測)
だった。欠乏の初期は葉の色がわずかに薄くなるだけで、1枚の葉だけを見ると正常な淡い色と区別がつきにくい。いくつかの回答は、色の薄さに気づいたうえで「光の加減」「下葉の自然な老化」と説明していた。マグネシウム欠乏を最有力に挙げた回答も2社で複数あり、葉脈の間が黄色くなる形を別の要素の欠乏と読んでいた。
もう一つは、圃場で撮ったハダニの被害である。2社とも3枚中0枚だった。Claude は葉が紫がかった写真を「リン欠乏または低温による一時的な紫化」と答え、OpenAI は「環境ストレスによる生理的な葉巻き」や「軽い黄化」と答えた。ところが紙の上で撮った PlantVillage のハダニでは、2社とも3枚中1枚を特定し、Claude はもう1枚でも候補に挙げている。同じ害虫でも、データセットが変わると結果が変わった。ただし、二つのデータセットは撮り方だけでなく葉も撮影地も違う。同じ葉を撮り方だけ変えて比べたわけではないので、撮影条件だけの影響とは言えない。Mohanty らの論文で、ウェブから集めた写真の成績が下がったのと同じ向きの結果ではある。
PlantVillage の葉かび病は、2社とも特定が0枚だった。2社とも、葉の色むらをウイルスによるモザイク病や、ハダニの吸汁の跡と答えた。写真は葉の片面だけで、回答の中にも裏側を確認できないことを判断の限界に挙げるものがあった。
外れ方の形 — 断定ではなく「低」「中」のまま別の原因を挙げた

今回の結果で最も重要なのは、外れ方の形である。「根拠なく断定した」、つまり正解がどこにも無いのに確信度「高」を付けた答えは、2社とも0件だった。外れた答えは、すべて確信度「中」か「低」のまま、別の原因を挙げていた。
確信度ごとに見ると、次のとおりになる。
| 確信度 | Claude(特定/件数) | OpenAI(特定/件数) |
|---|---|---|
| 高 | 2/2 | 2/2 |
| 中 | 6/11 | 5/11 |
| 低 | 6/20 | 3/20 |
今回の 33 枚では、確信度「高」は当てになった。ただし「高」の4件は、2社が同じハモグリバエの写真2枚に答えたものである。別の写真や質問、別のモデルでも同じになるとは言えない。一方で「中」は半分前後しか当たっておらず、OpenAI は健全の葉にハダニ被害と「中」を付けたり、疫病の葉をハモグリバエの食害と「中」で答えたりしている。「中」は「おそらく正しい」ではなく、「半々」と読むのが今回の結果には合う。「低」は、特定の手がかりというより、確認すべき候補の一覧として使うものだ。
回答の中身にも、確かめ方の手がかりが含まれていた。複数の回答が、写真の限界を自分から書いている。Claude のある回答は、判断に欠けている情報として
葉の裏側の状態(害虫の卵やダニ、うどんこ病などは裏面に出やすい)
を挙げた。OpenAI のある回答は「まず葉裏をルーペで確認してください」と書き、別の回答は「この写真だけを根拠に施肥や薬剤散布を決めるのは避けてください」と締めている。どちらの AI も、写真1枚で決着がつかないことは答えの中で認めていた。問題は、利用者が最有力の1行だけを読んで終わりにすることである。
植物の診断を AI に頼むときの聞き方

以上の結果から、質問の書き方を三つ決めておくとよい。
第一に、候補と確信度を必ず出させる。今回の質問文のように、最有力・他の候補・確信度の3行を指定すると、答えの読み方が決まる。植物の病害診断 API の plant.health を提供する Kindwise も、FAQ で水のやりすぎと栄養欠乏の症状が同時に出る例を挙げ、結果には原因の候補を複数示すことを推奨している。同社は、上位3候補に正しい診断が入るのは質問の3分の2を超える(73%)と開発元の数値として示している。植物の病害診断用の API でも1位だけで決めない設計になっている、ということだ。
第二に、写真と一緒に状況を書く。株全体のどこの葉か(下葉か新しい葉か)、症状がいつから出てどう広がっているか、置き場所の光と水やりの頻度。今回の回答にも、症状が下の古い葉から出ているかを確かめると判断しやすくなると書いたものがあった。写真1枚では伝わらない情報を、文章で先に渡しておく。今回の実測は条件をそろえるために葉1枚の写真だけを渡したが、実際に使うときは情報を足したほうがよい。
第三に、一度で終わらせず質問を重ねる。2026 年 7 月に Findings of ACL 2026 に掲載された論文 PlantInquiryVQA(同年 4 月に arXiv で先行公開)は、質問を段階的に重ねると正答が増え、事実と異なる出力が減ったと報告している。最初の答えで候補が出たら、「葉の裏にこういう特徴があれば A、無ければ B と考えてよいか」と、候補を分ける観察点を聞き返すと使いやすい。
実際に使う質問文の例を載せる。
室内で育てているトマトの葉の写真です。
症状は下の古い葉から出ていて、1週間ほどで3枚に広がりました。
窓際に置いていて、水やりは2日に1回です。
考えられる原因を可能性の高い順に3つまで挙げ、
それぞれについて写真から分かる根拠と確信度(高・中・低)を書いてください。
候補を区別するために、次に確認すべき場所(葉の裏、新しい葉など)も教えてください。
薬剤の名前や使い方は書かないでください。
最後の一行は、後で述べる法令上の理由による。
答えを確かめる手順 — 葉の裏、株全体、そして地域の公的機関

AI の答えを受け取ったら、次の順で確かめる。
- 確信度を読む。「高」で根拠が写真の特徴と一致していれば、その候補から確認する。「中」「低」なら、候補すべてを確認の対象にする
- 葉の裏と表を見る。今回の回答にも葉の裏側の確認を求めるものがあり、拡大鏡などで動く小さな虫・丸い卵・細い糸を探すよう勧めていた。カリフォルニア大学の病害虫管理の解説によれば、ハダニは主に葉の裏に群れで付く。一方でトマトのうどんこ病は、白い胞子が葉の表にも裏にも出ると同じ大学の解説にある。裏だけでなく両面を確かめる。今回の実測で外れた圃場のハダニは、裏を見ることを求められる症状だった
- 株全体を見る。症状が下葉だけか、新しい葉にも出ているか。数枚だけか、株全体か。今回の回答の多くが、株全体の様子が分からないことを判断の限界に挙げていた
- 別の角度・別の葉で撮り直して聞く。1枚の写真の見え方に引きずられていないかを確かめる
- 分からなければ地域の公的機関に聞く
5番目について、日本では都道府県ごとに病害虫防除所が置かれている。農林水産省は、農作物に見慣れない病害虫の被害が出ていたら、最寄りの指導機関、都道府県の病害虫防除所、植物防疫所などに知らせるよう呼びかけ、各都道府県の病害虫防除所の連絡先を一覧にしている。国外では制度が異なるので、それぞれの地域の公的な相談窓口を探す。
AI の答えは、この確認の順番を決めるための材料として使うのがよい。「何を確かめればよいか」を短時間で教えてくれる点に、一般の対話 AI を植物の診断に使う価値がある。
葉の裏の小さな虫や卵を探すには、LED 付きのルーペがあると見落としが減る。今回の実測で外れた圃場のハダニは、まさに裏を見て確かめる症状だった。
薬剤を決めるのは AI ではなく、ラベルと法令

診断の後には、何をすればよいかという問いが続く。ここで AI に薬剤の名前や使い方を聞くのはやめたほうがよい。今回の実測でも、ハモグリバエと答えた回答の一つは、対処の方向性として被害葉の除去などに続けて薬剤の使用に触れていた(ラベルの確認を促す形ではあったが)。本記事は薬剤の推奨を評価の対象から外しており、ここでも扱わない。
理由は法令にある。日本の農薬取締法第24条は、容器や包装に法定の表示がある登録農薬と特定農薬以外の使用を禁じている。第25条は、国が定める使用者の遵守基準に違反して農薬を使うことを禁じている。その基準を定めた省令の第2条は、食用・飼料用の農作物等に使う場合、ラベルにある適用作物・使用量・希釈倍数・使用時期・総使用回数を守ることを義務としている。これとは別に、どの植物に使う場合も、表示に従って安全かつ適正に使うよう努める義務がある。
農林水産省は、これが家庭菜園やガーデニングにも当てはまると説明し、ラベルにある作物と使用方法を守れば人にも作物にも安全だとしている。対話 AI の答えは、この表示の内容を知らないまま一般論を書くことがある。薬剤を使うかどうか、どれを使うかは、製品のラベルと地域の公的機関の情報で決める。国外では制度が異なるので、それぞれの国の表示と規則に従う。なお、この節は法令の概要を紹介したもので、法的助言ではない。
道具の選び方 — 対話 AI、植物用のアプリと API

植物の写真を見せる先は、対話 AI だけではない。
| 種類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 対話 AI | Claude、ChatGPT、Gemini | 状況を文章で足せる。質問を重ねられる。植物用に微調整されたものではない |
| 植物用アプリ | PictureThis | 開発元は植物病害の自動診断と治療をうたう。ダウンロード無料、有料の購読プランあり |
| 植物用 API | Kindwise の plant.id(種の識別)、plant.health(548 クラスの症状) | 開発者向け。登録で 100 クレジット無料。1,000 クレジットからの購入で1回 0.05 ユーロ(9.03 円。2026 年 9 月 25 日の七十七銀行の仲値 1 ユーロ=180.56 円で換算)、量が多いほど単価が下がる。3 万クレジット以上の購入分は有効期間が3か月 |
| 画像検索 | Google レンズ | 公式の説明は植物の名前を調べる用途。病気の診断はうたっていない |
対話 AI の画像入力には、それぞれ上限がある。Claude は JPEG・PNG・GIF・WebP に対応し、チャットでは1ファイル 500MB、1チャット 20 ファイル、画像は 8000×8000 ピクセルまでで、1000×1000 ピクセル以上の画像を推奨している。ChatGPT は PNG・JPEG・静止画の GIF に対応し、画像は1枚 20MB まで、無料プランのアップロードは1日3ファイルまでだ。Gemini アプリは1回のプロンプトで最大 10 ファイル、100MB までとしている。上限の単位はそれぞれ違い、Claude の 20 ファイルは1チャットあたり、Gemini の 10 ファイルは1回のプロンプトあたりで、1日の上限ではない。今回確認した公式ページで1日あたりの上限が書かれていたのは、ChatGPT 無料プランの3ファイルだけだった。
植物用の API やアプリは、植物のために作られている分、対話 AI より当たる場面はありうる。ただし plant.health の 73% も開発元の数値で、測り方は製品ページに書かれていない。どの道具でも、候補を並べて確かめるという使い方は変わらない。
AI の答えを一次資料で確かめる手順そのものは、植物以外でも共通している。AI に試験問題を作らせて誤りを数えたAI に問題を作らせて、公式資料で裏取りする — G検定の大項目ごとに生成した問題の誤り率を実測した(2026-10-01 公開)でも、答えの正しさは AI の文面ではなく、照合する相手を用意したかどうかで決まった。今回の実測で使った claude -p の最小構成の費用の考え方は、Claude Code の権限と費用を、常駐させる前に決める — 承認なしで走る実行に何を渡すか(2026-09-26 公開)にまとめてある。
この実測で言えないこと

結果を読むときの限界を、まとめて書いておく。
- 枚数が少ない。各クラス3枚、合計 33 枚で、各条件1回だけの実行である。2社の差や、症状ごとの正解率を一般化できる数ではない
- Gemini は実施できなかった。今回は2社の比較にとどまる
- 作物はトマトだけで、観葉植物は含まない。室内で育てる観葉植物の症状が同じ傾向になるかは分からない
- PlantVillage は各社の学習データに含まれている可能性がある。確認はできておらず、紙の上で撮った写真の結果が高めに出た理由の一つかもしれない
- 葉1枚の写真だけを渡した。状況の説明や追加の質問を足せば結果は変わりうる。今回は条件をそろえるため、あえて足していない
それでも、確信度「高」が当てになり、栄養欠乏と圃場のハダニが当たりにくいという傾向は、2社で同じ向きに出た。植物の診断に AI を使うときの目安としては、使える範囲の結果だと考えている。
まとめ — 植物の診断 AI は候補を出させ、確かめる順番を決めるために使う

- 研究の 99% は、病害分類のために学習したモデルが同じ撮り方の写真で出した数字で、撮り方も集め方も違う写真では3割台まで落ちた(撮影条件だけの影響を分けた実験ではない)
- 当サイトの実測では、トマトの葉 33 枚のうち Claude が 14 枚、OpenAI が 10 枚を最有力で特定した
- ハモグリバエの食痕は2社とも全問正解で、今回の確信度「高」はこの4件だけ、4件とも正しかった
- 栄養欠乏と圃場のハダニはほとんど当たらず、Claude は欠乏の葉9枚のうち6枚を「健康」と答えた
- 確信を持って間違える答えは無かった。外れた答えは、すべて確信度「中」「低」だった
- 質問では候補と確信度と確認場所を出させ、答えは葉の裏・株全体・撮り直しで確かめ、分からなければ都道府県の病害虫防除所などに聞く
- 薬剤は AI ではなく、製品のラベルと法令、地域の公的機関の情報で決める
写真を1枚撮って聞くだけなら、数十秒で候補が返ってくる。その候補を最終的な答えとしてではなく、葉の裏をめくる理由として使うのが、今回の結果に合った使い方である。
参照
- Mohanty, Hughes, Salathé「Using Deep Learning for Image-Based Plant Disease Detection」Frontiers in Plant Science(2016)
- Hughes & Salathé「An open access repository of images on plant health」arXiv:1511.08060
- PlantVillage Dataset 公式リポジトリ
- OLID I(Zenodo)
- Orka ら「OLID I: an open leaf image dataset for plant stress recognition」Frontiers in Plant Science(2023)
- Wang ら「A large language model for multimodal identification of crop diseases and pests」Scientific Reports(2025)
- 「A multi-agent multi-modal LLM with Monte Carlo tree search for interpretable plant disease classification」Frontiers in Plant Science(2026)
- Li ら「Challenges and strategies for harnessing large language models in plant protection」Frontiers in Plant Science(2026)
- Sakib ら「Thinking Like a Botanist: Challenging Multimodal Language Models with Intent Driven Chain-of-Inquiry」Findings of ACL 2026(ACL Anthology)
- 同 arXiv 版 arXiv:2604.20983
- Kindwise plant.health
- Kindwise plant.id
- Kindwise 料金
- PictureThis(App Store)
- Google レンズ
- Claude Help Center「Upload files to Claude」
- OpenAI Help Center「File Uploads FAQ」
- OpenAI Help Center「ChatGPT Image Inputs FAQ」
- Gemini Apps Help「Upload & analyze files in Gemini Apps」
- 農薬取締法(e-Gov 法令検索)
- 農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(e-Gov 法令検索)
- 農林水産省「除草剤の販売・使用について」
- 農林水産省「農薬の適正な使用」
- 農林水産省「病害虫防除に関する情報」
- UC IPM「Spider Mites」(カリフォルニア大学)
- UC IPM「Powdery Mildew on Field-Grown Tomatoes」(カリフォルニア大学)
- UC IPM「Broad Mite and Cyclamen Mite」(カリフォルニア大学)
